【9月*柴栗】~栗むきにずく出せ!/「ずく」とは信州方言で根気のことさ。の巻
里山沿いの道路端に、イガ栗の姿を見つけるようになると、いよいよ栗の季節だ。
栽培種ではない自生の栗は、「柴栗」とか「山栗」などと呼ばれ、
大きさは市場に出回る栗の実の半分くらい。足の親指くらいの大きさだ。
子どもなんかが、どんぐりなんかとまぜこぜに拾い集めてくるけど、
食べることもなく、飾るだけで捨ててしまうのが普通の反応なのかもしれない。
里の幸data | |
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名称 | 栗 |
分類 | ブナ科クリ属 |
分布 | 北海道南西部以南 |
落葉高木。山の秋の恵みの代表格。意外に多く山野に自生しているため、拾って帰る人は多いが、皮むきが面倒なので食されることは少ない。皮さえむいてしまえばアク抜き不要なので、実は調理しやすい山の幸。 |
だけど我が家では毎年これを食らう。たらの芽のように先を争って採ることががほとんどいないので
時季さえ間違えなければ、ちゃんと毎年ありつける。
樹下にあまり落ちていなくても、栗の木を軽くゆすってやれば、イガから外れた栗の実や、
イガごとの栗がパラパラと落ちてくる。頭上注意!
イガに入ったままの栗は、足で挟むように踏んづけて中身を出してやる。
栗は見た目以上にトゲが鋭く、手で触るとやたら痛いので慎重に。
ヒビがいったり、明らかに虫の開けた穴のある栗の実もあるが、
明らかに食いつくされていたり、黒ずんで古いものでなければ、構わず集める。
これは案外一つのポイントかもしれない。理由は後述する。
散歩がてら里山を一周する頃には、ビニール袋いっぱいの栗の実があつまる。
これは栗ではなくトチの実。大きな実がたくさん採れるが調理のしようがなく、
いまのところ中身をくりぬいて笛や鈴に加工して遊ぶくらいだ。
一番の難関。皮をむく
さて、ここからが問題。なんと言っても大変なのが皮むき。
1個1個が売っている栗よりだいぶ小さいので、やたら時間がかかる。
テレビなんかを見ながらチマチマと、包丁でむく。
簡単な皮のむき方もあるのだろうが、ここは毎年正攻法で挑む。
そもそも、これを面倒がるのであれば、柴栗を食そうなどと考えてはいけないのだ。
そういう輩は「甘栗むいちゃいました」でも食してるがよいさ!
外側の硬い殻(鬼皮というらしい)を取る。底の方が柔らかいので、底からむく。
内側の渋皮は、落ちて間もない栗の実であれば、ニンジンの皮をむくように
カリカリとこそぎ取ってやれば、ベタベタした皮が、案外簡単にとれる。
むき終わったら、色が変わらないうちに、水を張った器にポチャン。
ところが、落ちて少し日がたったものは、渋皮が乾ききっているために
このやり方は思うようにうまくいかない。
リンゴをむくように、包丁で実の外側ごと皮むきするのが普通だ。が、
なにせ柴栗は身が小さいため、実ごとむいてしまうと、
悲しいくらいに小さくなってしまう。できるだけやりたくない。
だからごり押しに力かませに削ってむく。
これに大変時間がかかる。しかも翌日軽い筋肉痛になる。
時々、コンニチワ、と虫さんが顔を出す。
カブトムシの幼虫のミニチュアのようなやつだ。
これに気持ち悪がっていては、自生の柴栗の皮むきなんかできない。
当然、農薬なんか使われていないからね。
ぷにぷにと丸々太っていてカワイイ、と自分の気持ちを巧みに騙しながら、
むいた皮と一緒にカス入れの中へポイとやる。
潰してしまうと見た目も気分も最悪になるので、
フフフ、可愛い奴め、こちらにお逃げ。などと
心の中で似合わないセリフを吐きながら捨てる。
ところで、穴が開いた栗の実だが、これは「虫が出て行った跡」であることが多い。
だから穴の開いた栗で虫とコンニチワする可能性は、意外と低かったりする。
完全体の栗の実を求めているのでなければ
(何度も言うが、そういう人は柴栗を食そうと思ってはいけない)
穴が開いているからといって、大きな実をあきらめることはないのだ。
中身が大きく食い荒らされているものでなければ、
虫のいた部分を取り除いてやればいいだけの話なのだから。
だいたいが、穴の見当たらない実から、何匹も出てくるのはザラにあることなので、
穴の有無=虫の有無 ではないことがわかる。
そもそも、実に卵が産み付けられるのは、樹上でのことで、落ちた実に虫が群がるわけではないのだ。
ちなみに、ひび割れて裂けた栗は、中身が大きく成長した栗の実なので
これはねらい目の栗である。
さて、大き目の実から順にむいていき、ある程度むけたら、栗ご飯を準備しよう。
炊飯器に米と水を通常と同じ量で用意し、
そこへしょうゆと酒を、まあ毎回適当なんだけど、一合につき大さじ1杯ずつくらいの割合で入れる。
んで、むいた栗を上からドバドバと入れて、炊き込みモードで炊飯開始!
栗を入れ過ぎて炊飯器で炊ける量を越えないようにだけ注意しよう!
炊きあがるまでの間、残りの栗むきに精を出そう。
ああ、全然終わらねぇ。とか文句たれながら、前後半あわせて合計3時間くらいかけて全部むいた。
今年は半分ヤケになって、小さいものまで全部むいてやった。
むき終わったころには、ご飯も焚き終わり、1日目は栗ご飯で終了。
茶巾絞りとしゃれこんでみる
さて、ひと晩水につけておいた栗。じつは毎年これの扱いに困る。
シロップみたいに煮たり、ホイップと一緒にクリームにしたりするのだが、
お子様たちに対し、今一つ売れ行きが悪い。
だけどせっかくむいたので、何か作らなきゃ収まらない。
今年はシンプルに茶巾絞りにしてみようと思い立った。
栗を蒸す。蒸し器なんて洒落たものはウチには無いので、
かるく水を張った鍋に、ざるを載せて、ふたをする。
30分くらい蒸したら、すりこぎでつぶす。
ある程度つぶれたら、味見しながら砂糖を適量入れ、つなぎにハチミツ(入れ過ぎない)と、お湯を加える。
お湯はコンクリに水を混ぜるのと同じ要領(←たとえが悪い)で、少量ずつ加えてべちゃべちゃにならないように注意すること。
ラップに入れて、軽くぎゅっと絞って完成。
ああ、簡単だし結構いいね。来年からこれで行くか。