信州*その日暮らし お金をかけない日々の記録

信州移住者による、ロハスと言えば聞こえのいい金欠生活録

【3月*ふきのとう】~春まだ浅い信濃路にて/雪の下より現れる萌黄色を愉しむ。の巻

「♪春は名のみの風の寒さ」(吉丸一昌作詞、中田章作曲『早春賦』より)*1と詠われる信州の春だが、まさに歌の通りで、立春過ぎてもまだまだ異常に寒い。

里でもゴールデンウイークくらいまでは雪が舞うことがあり、山のほうはというと完全に冬山なので、間違ってハイキングに来てはいけない。

そんな信州にも、遅まきながらも着実に春はやってくる。


雪の下から ふきのとう が顔を出す

日陰では半分根雪*2になっていたようなような雪が、ようやくとけだす頃に顔を出すのが、フキノトウ

春先にべちゃべちゃの雪が積もったあとは、、、と雪解けの庭先を覗いてみると、
f:id:outofjis:20180311101700j:plain 案の定出ていた。

朝寒かったので、あとで写真撮ろうと思っていたら、昼過ぎにはすっかり雪がとけてしまっていた。
写真を撮るには絵にならないので、日陰の雪を持ってきてパラパラとふりかけ、シャッターを押す。
その結果が上の写真。うむ、いい感じだ。

里の幸data
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名称ふき
分類キク科フキ属
分布日本全国
多年草。古くから食用にされてきた。茎は地中にあるため、花芽や葉がそれぞれ独立した植物のように見える。花芽は蕗の薹ふきのとうと呼ばれる

このフキの種類は何なのか知らないが、
フキノトウでこの種類が食べられて、この種類は食べられない、という話は全く聞かないので
たぶん、フキであればどの種類でもイケるのだろう。

庭先で見つけたものでも、田んぼ畦でも、河原でも、林道わきのものでも、
フキノトウであれば食べられると考えてよいようだ。
山菜取りで一番気を付けなければいけないのが、違う植物を採ったことによる誤食だが、
フキノトウは、前述のようにどの種類でも食べられる上に、間違いやすいものがあまりない。

フキノトウとの誤食による食中毒として知られるものに福寿草があるが、
何をどう間違ったら取り違えるのだろうといつも思う。
同じなのは花芽の芽吹きの時期だけだ。
たぶん、写真だけで判断していたり、あたりかまわず適当に採取すると
そういうことが起こるのだろう。

一つ一つ確認しながら採れば間違いは起こらない。
フキノトウは、摘んだ瞬間から即フキのよい香りがするし、
心配なら少しつぼみを広げて中の花を確認してみるとよい。
芽の下の方を探るようにして、できるだけ深いところでチョキン、とやる。
浅いところで切るとバラバラになってしまう。
根っこに毒があるから、と浅めに切ろうとする人もいるようだが、
ふきのとうの根はかなり奥の方にある。地面の下には茎が続いているので心配することはない。
もしも、つぼみの下がすぐ根っこだったとしたら、それはおそらくフキノトウではない。



フキノトウ見つけ方は、一番良いのは前年までにフキのありかを確認しておくこと。
芽が出たばかりのフキノトウをやみくもに探すのは難しいが、
とうの立って*3旬の過ぎたフキノトウや、フキの葉っぱであればだれでも簡単に見つけられるはず。
その場所を覚えておいて、翌年、雪解けの頃に(雪のない地方では霜柱がなくなる頃、草が芽を出す直前の頃に)覗いてみると、ひときわ鮮やかな萌黄色のフキノトウを見つけることが出来る。

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何よりも早く芽を出すので、見つけるのは非常に容易だ。

ひとつふたつだけ顔を出している頃が一番の収穫時期。
これだけじゃ少ないな、とあきらめるのは大きな間違い。
ふきのとうは群生するので、周囲1mくらいの範囲で枯れ草などをどかしてやると*4
ちょうど食べごろのつぼみ状態のものがいくつも見つかる。
左の写真のように、全然緑が見えなくても、この下にいくつもふきのとうが隠れているのだ。



ふきみそ をつくる

それはともかく、適当にフキ味噌を作る。
フキノトウは足が早く、切った面からみるみる茶色く変化してしまうので
とっとと火を通すに越したことはない。

レシピなんかない。適当にやるのが醍醐味だ。
用意するのは信州みそ*5と、砂糖。
ごま油を使ってもいいけど、せっかくのフキの香りがまぎれてしまうので個人的にはパス。

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採ったまま。普段はこんなことしないが、撮影用にザルに載せてみる。それっぽい。

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洗って茶色い枯れた部分をとる。取り過ぎると食べる部分がなくなるので適当に。

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粗みじんにする。素早くやらないと、切り口からどんどん茶色く変色してしまう。もたもたとカメラを出して撮っているため、茶変が進む。大変いい香りが部屋中に広がる。味噌はこのくらいかな?

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軽く弱火~中火くらいでごく少量の油で炒める。炒めながら砂糖と味噌を加える。味噌が固くやりにくいなら、少々のお酒を加えながら炒める。凶暴なほどいい香りが家中に広がる。やばい。

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完成。いただきます!

奥様が食してひと言。
「もっと砂糖入れて甘くしなくちゃダメ」
うぬぅ。



注釈

*1:安曇野(安曇野市ではなく、松本平松本市より北で、大町市より南の地域の総称)の春をモチーフに作られた唱歌

*2:雪が積もったままでとけず残っている状態のこと。信州は長野市以南は太平洋側の気候と同様に冬季に降水がほとんどなく、したがってあまり雪も降らないが、寒いので日陰や吹き溜まりにはいつまでも雪が解けず残っている

*3:薹が立つ=薹とは草花の花芽のこと。フキの花芽だから、「ふきとう」とよぶ。野菜類の多くは薹が立つとそちらに栄養が取られて葉がおいしくなくなるので、花芽が出ると摘むか、それまでに収穫する。転じて適齢期の過ぎた女性のことをトウのたった、と揶揄する。

*4:手でやると汚れるので、収穫用に用意した園芸ばさみや木の枝でよい。ひっかくようにどけてみよう。

*5:だし入りじゃないやつ。別に信州みそじゃなくてもいい。